意味が分かればいいから、と人はよく言いますが、意味が分かる訳文を作るのって実は結構大変なんです。私がなぜ「『意味が分かる訳文』を意識しています」などとわざわざプロフィール文に入れているかというと、意味が分からない訳文というのは実は数多く存在するからです。
英語という、日本語とは全く異なる言語体系で表現された概念を理解し、意味が分かる日本語で書き直す作業がいかに難しいのかは、普段意味の分かる訳文をあたりまえに納品してくれる翻訳者と付き合いのあるクライアントには理解し難いかもしれません。 しかし「英語のニュアンスをしっかりと汲み取る」という工程を経ないで字面だけ日本語にすると、実に意味の分からない訳文が出来上がります。なかなか想像しづらいとは思いますが、これが本当にさっぱり理解できない日本語なのです。 こうした翻訳結果(世に言うDeepLをちょっと直しただけのやつ)をレビュアーが修正するのは実に困難な作業なのですよ。だからレビューの仕事のオファーはみんな警戒するし、低い報酬では引き受けたがらないのです。 ですから「意味が分かる訳文」というのは、世の中に大量にあふれるさまざまな品質の翻訳の中で見れば、それだけでそれなりに質の高い訳文ということになります。そうでない訳文を大量に見るまで気付かない事実だとは思いますが。2024年4月3日水曜日
2024年4月2日火曜日
別にそれで誰も死にはしないけどどうにも気持ち悪い日本語があふれる世界
最近、某大手通販サイト(笑)で本を検索すると下の図の「簡単に確認」というボタンのように、「別にそれで死人が出たりはしないけどちょっと引っかかる」日本語が表示される頻度が高くなったように感じます。
前はこういうボタンが気になったりはしなかったと思うので、最近になって機械翻訳に切り替わったのではないかと推察しています。おそらくこの「簡単に確認」というボタンを押すと本の詳細情報を「簡単に確認」できるのだと思いますが、もはや以前こういう時、日本語で何と書かれていたかも忘れてしまいました。
同サイトで別の日には「もっと見せる」という日本語も表示されたことがあると私の手元のメモに残っています(7週間前)。「さらに表示」と書いて欲しかった、とは思いますが、別にそこで「もっと見せる」と書いてあるからと言って私が某サイトで本を買うのをやめることはないですし、誰かが命を落とすこともなければ某A社が突然業績不振に陥ったりすることもないのだろうと思います。
こういう風に「翻訳が不自然でも別に誰も困らない場面」においては、今後どんどんコストカットが進み、人間のチェックを経ることなく放出されていく日本語がインターネット上にあふれかえることになるのだろうと思います。
なんだかそんなことを想像するだけで今から頭が痛くなりますが、きっと私ひとりの頭が痛くなったところで誰も困らない、勝手にバファリン飲んどけや、という話なのでしょう。
日本語を愛する日本国民として、こういう流れが加速するのを止められないのは非常に悲しいのですが、どこもかしこもコストカットで、翻訳ごときにお金かけていられない、という世界観の中「正しい日本語を使って欲しいよう。えーん」という悲しみはきっとかき消されていくのでしょう。
「ほんの少しの違和感」と大幅なコストカット。天秤にかければ大幅なコストカットが優先されるのは止められませんし、仕方がないことだとは思いますが、日本語の崩壊につながっていくのではないかと非常に危惧しています。テクノロジーの進化と日本語文化の保護という二つの重要事項に挟まれたジレンマですね。
こういう話、誰かとどこかでしたいと思いますが...誰か今度一緒にやりませんか?
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私は主に法律文書の翻訳を手掛けていますが特許と医療以外はジェネラルに何でもやる翻訳者です。 翻訳の仕事ってまだあるの? とは、ときどき浴びせられる言葉です。 身近なところでは2年前に他界した父。 コロナ明けで約3年ぶりに再会した大学時代の友人。 翻訳以外の仕事で知り合った方々。...